金子光晴 『日本人の悲劇』

・いとこが母方の家系図を送って来てくれた。

 興味深く眺めているとふと思い出したことがある。

・子供のころ、ひいおばあさんに高崎駅前の自転車預かりを

 営んでいた親戚の家で会ったことがあるなあ。名前はくらさん。

 明治10年生まれ、昭和45年に93歳で亡くなっている。たぶん

 わたしが接っしたことのあるいちばん古いひとだと思う。

・明治のひとは完全に畳の生活だから正座がきちんとしていた。

 だから芯が一本通っていたイメージ。それに女性は間違いなく

 和装だった。日本髪を結っていたから寝る時は箱枕。そんな

 ことを覚えている。

沢村貞子に続いて金子光晴、明治生まれ。生き方をみてると

 若いころに大正デモクラシーの影響をうけているように思う。

          *

金子光晴 『日本人の悲劇』(旺文社文庫)を読了。

・「絶望の精神史」の二年後にこの本は書かれた。魏志倭人伝から

 はじまる日本にまつわる歴史書物を通して日本人を探っていく。

 解説で茨木のり子も書いているが、この本のよいところは

 金子光晴に思想がないこと。マルクスとかそういうものによること

 がないから難しいわからない単語が出てこない。

・日本の歴史を通して当時の文献を現代語訳して語られていく。

 江戸時代の国学から明治維新がはじまっているのがわかった。

 こういう視点はなかったなあ。それにアジアからヨーロッパに旅した

 見聞と幼いころの明治を記憶が付け加えられて、延々と続く日本人の

 性格があぶりだされている。

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 へき地の国にありがちな独尊主義で自分の国が最上国とおもいこみ、

 その国民に選ばれた民として驕りたかぶり、他国人を見下してひととも

 思わない風習をつくり、長い年月それをまもりつづけてきたためです。

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日本人の悲劇―土着化された人間性の宿命 (1967年) (富士新書)
 

 ・それにしても「50がらみの老人」ということばを見つけて

 時代を感じてしまった。