筑紫哲也 『旅の途中』(朝日文庫) その3

筑紫哲也 『旅の途中』を読んでいて、沖縄タイムス

 作った豊平良顯が沖縄戦後、首里で瓦礫の中から

 陶器や文化財を集めて野外展示したところ、多くのひとが

 文化の渇きをいやすように集まってきたそうだ。

軍事、政治、経済などあらゆる面で全能であった異民族の統治の

下で、沖縄であり続けることができたのは、一にかかって文化の

力だった。

・沖縄の文化はこういう切羽詰まったところから強くなってきたんだ

 なあと思う。

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・この本は、出会った39人の人物像を書いている。もうひとり野中広務

 が印象に残った。強面ではあったがハト派であって沖縄などの問題に

 取り組んでいた。

行くところまで行かないとわかったくれないのか。自分のことだけ考えて

相手の痛みがわからないのか。ひとつの風が吹くとどうしてみんなそちらに

なびいてしまうのか。

現代社会に対する野中の危機感。野中や筑紫も亡くなり、このような

 ことを言えるひとたちがいま不足しているのはあきらか。先が見えない

 不安なコロナ禍のなかで瓦礫の山から掘り出してくれるひとにでてきて

欲しい。