新藤兼人『正伝殿山泰司 三文役者の死』(岩波書店 同時代ライブラリー)

 ・新藤兼人『正伝殿山泰司 三文役者の死』

 (岩波書店 同時代ライブラリー)読了!

三文役者の死―正伝殿山泰司 (同時代ライブラリー)

三文役者の死―正伝殿山泰司 (同時代ライブラリー)

  • 作者:新藤 兼人
  • 発売日: 1991/03/15
  • メディア: ペーパーバック
 

 ・『三文役者あなあきい伝』に続けて読んでしまった。

 こちらの初版の発行日が1991年3月15日。ちょうど

 30年前か。30年ぶりの再読になる。同時代ライブラリー

 というのも懐かしい。いつの間にかなくなってしまったなあ。

・こちらは「正伝」というだけあって、生々しい。そりゃ

 そうだよな、自伝は自分に都合よく書くもんね。

殿山泰司が最初に入ってのが新築地劇団の俳優養成所。

 その時の同期が千秋実多々良純。前にもこのブログに

 書いたが、以前わたしが住んでいたところから見える

 マンションに多々良純が住んでいるというはなしを行きつけの

 床屋さんから聞いたことがある。いつも近くを散歩して

 たわよ、なんて言われてへえーと思っていた。どこかですれ違って

 いたかもしれない。

タイちゃんは、戦争をやった日本を憎んだ。弟幸二郎を殺した

日本を憎んだ。日本なんてひっくり返ればいいと思った……

ニッポンのバカヤロー、と泥酔して叫んだ。

殿山泰司は戦後日本のまともな人間だということがよくわかる。

 酔っぱらわないと言えない弱さなんだけど、そういうところは

 ようわかるなあ。

・これは新藤兼人のことばだけれど

 戦前の広島を知っているわたしは、たった一発で全市をふっとば

してしまった原爆というものは、もはや兵器という概念を超えた

みな殺しの下につくられた、悪魔の凶器に思えた。

・戦争の時代を体験から出てきた重いことばが忘れられてきている。

 30年も経って本棚に埋もれてしみだらけの本だけど、こういう本

 を再読することは必要なのだな。

・さて彷書月刊 特集「殿山のタイちゃん」を引っぱりだしてきた。

 殿山泰司は続くのだ!