「リアリズムの宿」に行く−4

山から降りてきて、はじめての一軒家。地図をみても
ガイドブックをみても今日泊まろうと思っていた小屋
であることは間違いない……と思う。表札も看板も
でていなかった。小屋にはおばさんがいた。
「一晩、泊めてください」といったら、「わたし
ひとりだから」と断られた。小屋の名前を確認したのだが、
よく聞き取れなかった。もっと下の民宿まで4kmもある。
陽も陰ってきたので、そこまで歩く気力はなかった。
結局、泊めてもらった。いろりのある部屋がひとつ。
おばさんがいうには、夏の間だけこの小屋の番を
しているとのこと。いろりの脇に寝たのだが、夜は
ねずみの運動会でうるさかった。この小屋が本当に
針生小屋だったのか確信が持てない。もしかしたら、
道路工事の飯場だったのかもしれない。
太田蘭三「殺意の朝日連峰」( 光文社文庫
この本にちらっと出てきます。