黒岩さんのこと

・昨年春の一箱古本市でのこと。記憶の蔵に隣接した公園が会場だった。
 どすこいさんやおなかすいたさん、鉱石書房など個性的な一箱が5店
 並んだ。
・11時開店で一番最初に来たお客さんが黒岩比佐子さんだった。いつも
 の黒い服装で。右はじが「とみきち屋」さんで、黒岩さんはここで
 店主の風太郎さんや奥さまと熱心にはなしをされていた。その時間が
 30分を超えていたと思う。
・この日、黒岩さんは自分がよいと思う一箱に「黒岩比佐子賞」を出す
 審査員だった。一箱古本市が終わって、打ち上げで「黒岩比佐子賞」
 が発表になった。その「黒岩比佐子賞」を受賞したのが「とみきち屋」
 さんだった。黒岩さんのコメントが印象に残った。

ブックオフで買ったような本が並ぶ一箱が多いなか、「とみきち屋」
さんの一箱は、古本屋で買って自分が読んだ本を並べていた。

・このことばにはうーんとうなってしまった。たしかにわたしは一箱
 で売れそうな本を日夜ブックオフで探していたからである。
・この時「とみきち屋」さんの箱に並んでいたのは、徳川夢声戦争日記
 全巻(1,700円)や五味康祐のエッセイ(500円)などだった。*1
・黒岩さんの本からは、井上孝治の写真のすばらしさを
 教えてもらった。

 交差点に3台の三輪トラックと1台のタクシー、その間を行き交う
 人や自転車……この構図、バランス、ジャリ道の質感。
 狙ったって撮れない。
・10月16日に東京堂書店で黒岩さんの講演会があった。立ち見が
 でるほどの盛況だったそうだ。
・その日は「のほほん ふるほん ふぇあ」の初日で、駿河台下ヒナタ屋
 で設営をしていて講演会には行くことができなかった。
・たまたまそのヒナタ屋で黒岩さんの講演会の打ち上げが6時から
 あった。わたしもお誘いを受けていたのだが、遠慮させていただいて
 5時には引き上げた。
・Mさんが、黒岩さんに見てもらおうと村井玄斎「子猫」をもってきて
 一番目立つところに並べた。
・後で聞いたはなしだが、黒岩さんも少しだけ打ち上げに参加された
 そうだ。黒岩さんは「のほほん ふるほん ふぇあ」にどんな感想を
 持たれたのだろうか。村井玄斎の「子猫」を手にとってもらえたの
 だろうか。
黒岩比佐子さん、安らかにおやすみください。
 ありがとうございました。
 
 
 

*1:*日記をひもといたらこれらの本の値段が書いてあった