・父とはなしをしていて、突然
「又吉よりおれのほうがいいもの書くよ」と。
それこそ火花を散らしたのですが。ちなみに
わたしの父は本を読まない。
・どんな小説を書くの、と聞いたところ軍隊の
はなしになった。
*
・父が入隊したのは、練習生として三浦三崎に配属に
なった。ある日、茅ケ崎まで30kmを歩くということ
があって、やっとの思いで茅ケ崎について、地元の人達が
兵隊さんに食べてもらおうと赤飯を炊いて待っていて
くれたそうだ。
・それをみた一部の兵隊さんが、列を乱して赤飯に駆けつけた
ことがあった。それを見ていた上官が怒ってみんなに赤飯を
食わせず、自分ひとりで食べていたそうだ。
・そのあいだに立つ軍曹(?)が土下座して謝ったけど、
なかなか許してもらえず、3時間後にやっと赤飯を食べること
ができたそうだ。
・また、帰りは30kmの道のりを徒歩で帰ったという。この時
には死者もでたというほど厳しいものだったらしい。
*
・こういうはなしを聞くといかに軍隊の上層部がいい思いをして
権力を発揮していたということがわかる。戦地での経験はない父
だが軍隊とはどういうものであったかということがすこしでも
わかる。直接聞くことができるというのは貴重なこと。
*
・父の兄、つまりわたしの伯父は近衛兵として家族で満州に行って
いた。引き揚げてくるときにいとこが二人亡くなっている。
詳しいことはよく知らない。伯父も伯母もこの世にはいない。
・戦後に生まれたここのいとこに聞いてもほとんどははなして
くれなかったそうだ。
*
・母方の伯父は元特攻だった。戦後は、日本航空のパイロットに
なったのだからすごい。やさしいのだが怖い人だった。
わたしが小学校3年生だったか、プールに連れていってもらった。
まだ、わたしは泳げず浮かんでいるだけだったが、この伯父が
いきなりわたしのあたまを掴んで沈めたことがあった。もがいて
水を飲んでしまって、それこそ死ぬかと思った。特攻の伯父から
したら弱いわたしが許せなかったのだろう。それ以来、泳げる
ようになったのだから伯父には感謝している。
・この伯父も戦争のことなどはなしをせず亡くなった。
*
・最近読んだ本。「戦争がはじまる」福島菊次郎全仕事集(社会評論社)。
あとがきで福島の軍隊体験が書かれている。
この本の発行は1987年。いまよりも平和だった時代に戦争が
はじまると警告している。
- 作者: 福島菊次郎
- 出版社/メーカー: 社会評論社
- 発売日: 1987/08
- メディア: 単行本
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・戦後も戦争をひきづっている人々を写真に収めた写真集です。