・14日に墓参りに行き、実家に顔をだした。10月に90歳になる
父は近年になく元気だった。
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・父は怒らない人である。怒ったはなしを聴いたのが1回。
怒っているのを見たのが1回。わたしが怒られたのが1回。
子供のころ、怒られたことは全くない。怒られたのは、
5年ほど前のこと。理由は忘れたが「お前がちゃんとしないから
いけないんだ」と。初めて怒られたものだから、こちらは
どう対応していいかわからずどぎまぎしてしまった。
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・父は泣かない人である。泣いたのは見たことない。母が
亡くなった時でさえ泣かなかった。
・今回初めて泣いたはなしを聞いた。5歳の時に養子に出されそうに
なったそうだ。ばあさんに連れられて新町の老夫婦の家に行った
そうだがいやだと泣きじゃくったそうで、そのままばあさんが
連れ帰ってきたそうだ。
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・父は女性のファンが多い。まあ優しい人であるからなのだが、
そうなのだが。もてるというのとも違う気がする。
・あれは、まだ父がレッズのボランティアをしていたころだけど、
きれいな女性が「よしいさ〜ん!」と手を振ってこちらに
向かってきた。こんなきれいな女性に知り合いはいないよ、
と思っていたら、そのきれいな女性は父の手を取って
「久しぶり、会いたかった」といっている。わたしは嫉妬した。
・30年ぐらい前に上野の松坂屋にあった古くから出入りしていた
釣り道具屋にいっしょに行ったとき、そこの女店主が父をみて
「来たな美少年」と言ったのにはびっくりした。まあ、江戸っ子
のイキなあいさつだったのかもしれない。
・余談だが、デパートの1階に釣り道具コーナーがあったとは
いまでは想像もできないよね。いくら下町とはいえ。
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・きゅうになにを思ったか「8月16日だ!」と父は話し始めた。
昭和16年の5月に国鉄の就職試験を受けたのだが、なかなか
返事が来ずに採用通知が来たのが8月16日だったそうな。
・父は15歳だな。開戦の5か月前か。こんな時期にもしも
国鉄に入らずにぷらぷらしていたら……と思うと、
8月16日というのは記念日なのかな、と。