木下順二『本郷』(講談社文芸文庫)

 

 

・読みたい本って、この作者からあの作者へリレーのようにバトンタッチ

 されていく。むかしつげ義春が漫画のあとがきかなにかで、好きな

 作家として井伏鱒二をあげていた。それから井伏の本を読むように

 なった。

・それでいくと高田渡山之口獏茨木のり子ときて木下順二

 たどり着いた。どこかで茨木のり子木下順二の対談を読んだこと

 があるなあ。

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・むかし木下順二『本郷』は単行本を持っていた。それもサイン入り。

 でも読まずに一箱で売ってしまった。今回は須方書店で文庫本を

 見つけて購入し、読むことにした。

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・むかしの本郷界隈のこと。本郷といっても向丘に長く住んでいた。

 向丘といえば、喫茶おとらのあったところなので千駄木方面から

 よく歩いた。木下順二もこのあたりを散歩していたそうで読みながら

 風景が頭のなかに出てくることがあった。

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・あとがきでハッとしたことが書いてあった。夏目漱石の「三四郎」に

 出てくる広田先生が西片町10番地への三号に引っ越した、と書いて

 あるそうだ。木下順二はここが夏目漱石が住んでいた番地だと思って

 いたが実際にはろの七号だったそうだ。

それなら漱石は、への三号という、それを口にする与次郎のお人柄に

何となく似つかわしいこの番地を、何から思いついたのだろう。

漱石が「への三」を使っていることに興味を持っている。

 似つかわしい番地=への三。この漱石研究は進んでいるのだろうか。

 とりあえず「三四郎」を読んでみたい。