小倉美恵子『オオカミの護符』

・整形外科に行ってきた。やはり太もも裏の
 肉離れであった。全治は1か月から2か月。
 予想していたとはいえ、う〜ん。
・まあ、普段の生活には問題ないのだが、
 山に行けないのは痛い! ことしの夏は
 久しぶりに友人と東北の山に登る計画を
 たてていたのだ。それも中止もしくは延期。
・ことしに入って7回、秩父の低山を歩いた。
 いま一番興味があるのが秩父の山ですね。
        
・小倉美恵子『オオカミの護符』を読了。

オオカミの護符 (新潮文庫)

オオカミの護符 (新潮文庫)

 これは何年か前の往来堂書店のD坂文庫で
 谷根千工房の山崎さんが紹介していて、
 気にはなっていた。それがここのところの
 秩父詣でで一気に読みたくなっていたのだ。
・著者の小倉さんは川崎の農家の出身。その
 実家のまわりがどんどんとベッドタウン
 なっていった環境のなかで育っている。
・そんな変わりゆく地元の伝統を映像に残そうと
 ビデオを回す。そのうちに「オイヌさま」の
 護符が気になってくる。そこからドキュメンタリーが
 はじまる。
        
秩父鉄道波久礼駅から外秩父の尾根を歩いていくと
 釜山神社がある。ここのこまいぬが筋肉質ですごい歯並び。

・ああ、これはオオカミだなとすぐにわかった。
 あとで調べるとやはりオオカミ伝説の神社だった。
・それにしても秩父の山の深いところに立派な神社が
 多い。ここもいまだから尾根沿いに林道が通っている
 からわけはないが、むかしはどのようにして建材など
 を運んだのだろうか。先日登った陣見山にも十二天
 と地図に書いてあるから小さな祠だと思っていたら、
 立派な神社であった。なぜか鐘つき堂まであった。ここも
 石段を登って、その下が参道になっていたのだが
 いやはやすごいところに建てられたていた。往時は
 参拝客が多かったようでいくつも石の鳥居が現れた。
        
・はなしは川崎から奥多摩、そして秩父へと進んでいく。
 生活が山とつながっているんだね。
・オオカミの護符につながる行事、伝統は近代のことば
 である「宗教」や「信仰」とは違う祈りである。
・地元の民にそれだけ密着しているということ、もっと
 根本的なものであるんだな。それが「宗教」「信仰」と
 言われるのは違うのではないか。
・世代を超えて守り続けていくのが「仕事」。

むしろ「仕事」だと思って行っているほとんどの労働は「稼ぎ」と
いえるかもしれない。

・現代は稼ぎばかりに変わってしまった。「仕事」を続けてきたひとが
 亡くなり、若者は山を離れ「仕事」が次の世代につながっていかない。

明治維新でも、あの戦争でも変わらなかったことが、ここに
きて大きく変わろうとしているのだ。

 ということばに衝撃を受けつつも納得してしまうのである。
・もしかしたら有史以来の変化が起きているのかもしれないと
 思うと不安になる。