朱和之『南光』

 

 

・朱和之『南光』(春秋社)読了!

・南光さんは台湾の写真家。戦前は日本に留学していて、戦後台湾に

 戻ってカメラ店を開いて、写真家としても台湾の礎を開く。

・ノンフィクションのようではあるが、南光さんが残した文章はなく

 著者の創作だそうです。写真についての表記が詳細で特に暗室

 のことはこの小説のモチーフになっている。写真の歴史を読んで

 いるようでもある。

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・わたしは写真好きで高校生のころは暗室を作ってプリントの引き延ばしを

 やっていたし、長年仕事で写真に関わっていたのにちんぷかんぷん

 のところもあった。ほんと好きなのに写真に関して勉強不足。

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・ネタバレになるので詳しくは書かないがところどころ著者の表現がさえて

 いてセミの抜け殻のたとえは、読んでいて怖くなるほどだった。

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・この本を読むきっかけは、翻訳が中村加代子さんだからである。

 1年半前にお会いしたときに翻訳中の小説があることをお聞きして、

 この本の出来上がりを待っていました。

・ひとつひとつの単語の意味を理解しないと文章にならない。まして

 ふたつの言語を操らなくてはならない。写真の専門用語を使いこなし、

 さらに風土、宗教、歴史、民族のことがからんでいて、そういう

 小説の裏側にあるものも充分な知識としてもっていなくてはいけない。

 これは中村さんにしかできない翻訳なのかもしれない。

・クールは表紙の装画、装幀もすばらしい。わたしの好み。

 装画 柳智之、装幀 佐野裕哉

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・南光の写真店の写真を見ていると、むかしライカの専門店が

 ニュー新橋ビルの4階にあった。また、ローライの専門店も

 銀座不二家の裏のほうにあったことを思いだした。

・ライカは買えないがローライ35が欲しくなりました。