五味康祐にはだまされた!

多くのひと証言でではなしは組み立てられていた。
なんの疑問も持たずに読み進んでいったのだが、
そのうちにスキャンダラスな事柄が飛び込んでくる。
こんなことあったのかなあ。それが
五味康祐「小説 長島茂雄」(光文社文庫
ノンフィクションだと思っていた。タイトルを
見直したらちゃんと「小説」と書いてあるではないか。
五味康祐のすごいところは長島茂雄を歴史上の
人物として、史実をもとに肉付けをしていくところである。
だから、登場人物は、ほとんど実名である……。
どこからがフィクションなのか。どこまでが
ノンフィクションなのか。読者を手玉にとって
楽しんでいるようである。書かれたのはもっと前だが、
この文庫がでたのが1993年。
まだこの頃は名誉毀損もゆるかったんだろうな。
現在だったらこの小説を発表できないだろう。
もうすこし五味康祐の手のひらでころがってみようか。