ミニミニカラー文庫「酒の店」東京編

・「ワーズワースの冒険」というテレビ番組を覚えているでしょうか。
 1994年から1997年にフジテレビで放送されていた。ちょっと上品な
 こだわりの趣味と道楽の紹介番組。Wikipediaの受け売りです。
 時代なのでしょうか、こういう番組がなくなってきた。似ていると
 いえばEテレ美の壺」ですかね。
・この「ワーズワースの冒険」で「居酒屋」というテーマで紹介され
 たのが、武蔵境にあった「二合半」。老夫婦がやっていて、民芸調
 というか、田舎風というか、江戸時代の飲み屋ってこんなじゃな
 かったかと思わせるたたずまい。浅草の暮れ六、根津の甚八みたい
 といえばわかってもらえるか。たしかお酒は二合半しか飲まして
 くれなかったんじゃないかな。
*
・武蔵境に引っ越したのは確か1998年の11月だったか。「二合半」は
 すぐに見つかったのだが、仕事が忙しくてなかなかいけなかった。
 そうこうしていて、12月になってしまった。早く帰れる日があって
 「二合半」に寄ってみたら、「閉店しました」の張り紙。ガーン!
  なんてこった。
・というわけでとうとう「二合半」で飲むことはできなかった。
 いま、この「二合半」をネットで検索してもほとんで出てこない。
 かろうじて日々の泡さんのブログに写真が出ている。

日々の泡
http://blogs.yahoo.co.jp/mailztoz/49600333.html

*
・先日、神保町のコミガレで昭文社 ミニミニカラー文庫「酒の店」
 東京編を見つけて、ペラペラとめくっていたら「二合半」が載って
 いるではないか。

武蔵野ムード 二合半
「暗くて静かで空き地もあった横丁に、この店の行燈がポツンと
下がっていた。武蔵野をさまよい歩いてふと見つけた灯りに誘
 われて疲れた足を休ませてもろうか、そんな気分でのれんをく
 ぐったものだ」

・そんなことが書いてある。
・このミニミニカラー文庫、文庫本より小さい。昭和56年発行。
 裏に金のエンボスで製薬会社のロゴが押してある。東京のホテル
 や交通機関が掲載されているから、出張用に社員に配られた
 ものと思われる。
(ちなみにこのミニミニカラー文庫「喫茶・ケーキの店」には、
 青秋部長のご実家が経営されていた田端駅前の喫茶店「アンリイ」
 もちょっとだけでている)
*
・それから5年ほどはお店は残っていた。いつだったか、夜に境南浴場
 という銭湯に入りにいく途中で空き家になった「二合半」の前を
 通ったら、おばあさんが花束を持って店の前に立っている。
 この人がおかみさんだったのかなと思いながら、通り過ぎた。
 小一時間して一風呂浴びて、帰り道にまた「二合半」の前を
 通ったら、まだそのおばささんがじっと花束を持って立っていた。 
・いまは新しいふつうの家が建っています。
*
不忍ブックストリートの10年を記念して谷根千ウロウロさんこと
 山田さんがムービーを作ってくれました。紹介が遅くなって
 しまった。

不忍ブックストリート一箱古本市
http://www.youtube.com/watch?v=HIhZzcQAxRY