この夏に読んだ本、読めなかった本

・日祝日4日間の仕事が終わった。さて、これから
 どうしようと思って、Twitterを見ていたら深川
 美楽市が6時までというのを見つけた。
・深川美楽市のなかで一箱古本市が開催されている。
 5店舗と小規模なものだが、古本の猛者ばかり。
・レインボーブックスをはじめ、白楽六角橋、
 雑司ヶ谷みちくさ市、松本一箱と流れてきている
 から皆さんお疲れ気味。
・小さいけど久しぶりの一箱古本市を味わうことが
 できました。
          
・戦争がはじまるとはどういうことなのか。
・児島襄「開戦前夜」(文春文庫)を読みました。
 児島襄なんて、30年ぶりぐらいに読んだのでは
 ないだろうか。最近は、中公文庫の東京裁判以外
 ほとんどみかけなくなった。

児島襄「開戦前夜」(文春文庫)

開戦前夜 (文春文庫)

開戦前夜 (文春文庫)

・一年前の就任から昭和16年12月8日までの野村駐米大使を
 主人公にしている。海軍大将の野村大使は、開戦ギリギリ
 までアメリカとの外交交渉を続けていた。当時の外務大臣
 が松岡洋右で、首相が近衛文麿
・松岡外相が結構強気で、第二次の近衛内閣は、閣内不一致で
 総辞職している。近衛首相は、イメージとは少し違って
 けっこうはらがすわっている。
・軍部が台頭してきて戦争を起こしたのだろうが、開戦の一年
 前は、東条陸相アメリカとの開戦回避に賛成している。
アメリカとのひとつひとつの行き違いが、関係悪化に向かって
 いくのがわかる。全体で500ページあるのだが、最初の
 100ページは展開が進まずちょっとイライラした。
アメリカは欧州参戦するのに日本と戦争はしたくなかったはず。
 日本はそれこそ石油をはじめとした多くの物資をアメリカに
 頼っているのだから、断たれたらにっちもさっちもいかなくなる
 ことは目に見えていた。アメリカがじわじわと対日禁輸すること
 が戦争の引き金というのもあるのかもしれない。

実際には、しかし、戦争とは政治が後退して軍事に頼る事態をいう
はずである。

・そうか、戦争とはそういうことなのか。

もし、日米交渉がなかったら、太平洋戦争は開幕しなかったであろうか。
この設問にたいする解答は、自明である。太平洋戦争の起因は、多様で
ある。その時間的にも空間的にも複雑な軌跡をたどるとき、太平洋戦争
の発生が日米交渉の有無だけに左右されることは、容易に理解できる
はずだからである。

・これはあとがきでのことば。
ミッドウェー海戦での敗退、ガダルカナル島での米軍の反抗に対して、
 もうひとりの来栖大使に東条首相は「戦争を一刻も早く終結するよう
 ご尽力願いたい」といったそうだ。

東条首相が戦争という国家の大事を、まるで電灯のスイッチをひねるように
簡単な仕事と考えているのかと感じた……「総理、和平工作は戦争を起こす
ように簡単にいかぬものですよ」

・と、来栖大使は述べている。
・戦争をはじめるひとの「軽さ」!
          
・児島襄は、この本を書くのに当事者をはじめ、数多くの文献・資料を
 元に書いている。歴史本はこういう緻密な作業な上に書かれるべきなのだ。
 いまは、もう当事者も亡くなっているからこの本が貴重な資料なのだ。
・未読本。この夏、戦後70年を考える本をもうちょっと読もうと思っていた。
大岡昇平「野火」(新潮文庫)は、古本屋を探していたのだがなかなか
 見つからず、やっと地元武蔵野書店で¥120で購入できた。

磯田光一「戦後史の空間」(新潮文庫

戦後史の空間 (新潮文庫)

戦後史の空間 (新潮文庫)

磯田光一もなかなか見つからず、モンガ堂でM&Mから¥500で購入。

水木しげるラバウル従軍後記 トペトロとの50年」(中公文庫)

・この文庫、偶然にも見つけた。戦後すぐの古い水木のデッサンなど
 が載っていて、そのころの水木の心境が絵にあらわれている。
・あとは、孫崎亨「戦後史の正体 1945-2012」なんかも読んでみたい。