忍ばずの女

ジャケ買いというのはしたことがあるが、タイトル買いは
 あまりない。『忍ばずの女』高峰秀子(中公文庫)。

忍ばずの女 (中公文庫)

忍ばずの女 (中公文庫)

 
高峰秀子の本は、いくつか読んでいるので面白さは知っている。
 この本は前半が演技論などで、後半が「忍ばずの女」の脚本が
 載っている。脚本を書いていたとは知らなかった。
・あとがきで養女の斉藤明美がこんなことを書いている。

高峰が書いた文章は、読む人を励まし、必ず生きる力を与える

 と、確かにそうなんだよね。わたしがこの本のなかで一番
 印象深かったのは、

人間は、それぞれ胸の奥にどれほどの思いがあろうと、傷が
あろうと、見かけだけは肩を寄せ合い、カッコつけて生きて
いかなければならない哀しい動物なのだ、ということを、
私は知った。

・これは、「忍ばずの女」のモデルになった石井ふく子
 おとうさんとおかあさんのことを言っているのだが、
 それは5歳の時から、養父母と親類縁者を養うために
 働いてきた高峰秀子の生き方にも当てはまっているよう
 に思う。
*
・きのう、人形町でランチを食べたのだが、その定食屋に
 明治座の公演ポスターが貼ってあって、「演出 石井ふく子」と
 なっていた。調べたら86歳か。すごいなあ、おやじと同い年だ。
*
・この本を見つけるずっと前に妄想をしていたことがある。
 不忍には魅力的な女性がたくさんいるから、モデルになって
 N氏が短編でもいいから小説にしてくれないかなと。
 題名は「忍ばずの女」ならぬ、もちろん「不忍の女」。