植木等『夢を食いつづけた男』

 

・柴又に住んでいたころだから、35年ぐらい前だろうか。

 会社は新橋だったから京成で通っていた。土曜日の夜、よく

 浅草で途中下車して六区にあった浅草東宝でオールナイト

 を観ていた。特集はクレイジーキャッツ。オールナイトと

 言っても、夜8時からだから2本みて終電で帰っていた。

・当時の浅草東宝オールナイトはすごかった。ある時、

 酔っぱらいがそれこそ映画と大声で会話していて、

 それに怒った客が酔っぱらいのむなぐらを掴んでけんかが

 始まった。それを目の前でやられるのでたまったもん

 ではない。また、フイルムが退色していて、真っ黄色の

 モノクロ?映画をみせられたこともあった。

・「ニッポン無責任時代」を久しぶりに観てクレージー

 はまってしまったのだ。あの植木等の抜けた明るさが、

 たまらなくおかしかったなあ。

         *

植木等『夢を食いつづけた男』(ちくま文庫)読了!

 むかし朝日文庫版を持っていたはずだが、読まずに

 売ってしまった。先日行ったタナカホンヤで見つけて

 購入しました。

・そうこれもずいぶんとむかしのはなしだが、村上龍

 トーク番組で植木等がゲストででていてお父さんのはなし

 をしていた。お父さんに「わかっちゃいるけど、やめられない

 は親鸞の教えに通じる」と言われたという。これがずっと、

 あたまに残っていて植木等のお父さんにちらっと興味があった。

・この本は「おやじ徹誠一代記」と副題がついているように、

 お父さんの伝記である。

・中心になるのは戦前に弾圧されて投獄され拷問を受けると

 いうすさまじいはなし。沢村貞子「貝のうた」を思い出した。

・この本はそんなお父さんを持つ植木等の自伝でもある。