谷口ジロー 『いざなうもの』

狩撫麻礼が亡くなったのか。かわぐちかいじ「ハード&ルーズ」。
 大友克洋のさよならにっぽんに収録されている「East of The Sun,
West of The Moon」は大傑作だと思う。弘兼憲史「エイントチャウ」
 も好きだったなあ。弘兼漫画は随分と読んだけど、これだけ売らずに
 最後まで手元に残しておいたはずなのにどこかに消えてしまった。
 とほほ、読みたくなったのにこれ古本屋で全然みないからなあ。
           
・そうそう谷口ジローの漫画原作もいくつかある。
・昨年の12月に恵比寿の日仏会館ギャラリーで「描くひと 谷口ジロー
 の世界」展で数々の原画を観た。もうどれもこれも細密ですごい。
・ビールを飲んで呆けている漱石の顔、背景の電化製品、画面いっぱいの
 草木、ふらりの月のクレーターまで。めがね外してじいっと顔近づけて
 みたんだけどどうやって描いているのかわからなかった。もう、
 うなりっぱなし。
・正月に往来堂書店で購入したのが、谷口ジロー『いざなうもの』
小学館)。

・絶筆となった「いざなうもの」をはじめ、「彼方より」「何処にか」
 「魔法の山」もそれぞれ迫力がある。もうこれは怖いくらい漫画を
 描くという執念が感じられる。漫画でこんな感じも持ったのは
 はじめてです。

2017年を振り返る

・きょうは大霧山を歩いてきた。太ももの肉離れをおこして
 リハビリをしていたのにまったくといっていいほどよく
 ならず、年末を迎えて半年ぶりに2度ほど山歩きをしました。
・旧定峰峠から大野原駅までよせばいいのに2時間もノンストップ
 で歩いてしまって、最後は駅の階段を降りるのにもひと苦労。
 ダメですね、過信してしまってまたぶり返してしまった。
・これでほぼ外秩父の山々はめぐることができた。来年は
 秩父御岳山や四阿屋山に挑戦しようか。まあ、外秩父の1000m
 未満の山で満足していますけど。
          
・上野原の坪山で70代の3人が遭難して亡くなったというニュース。
 信じられない。あそこらへんはよく登っていたのに坪山は
 知らなかった。地図を見ると危険のマークがついているから
 岩場があるんだろう。詳細は報道されていないからわからない
 が1100mの山で3人が同時に亡くなるというのは、なにが
 あったんだろうか。
          
・ことしを振り返ります。やまがら文庫としては、4/1に第2回縁側一箱
 古本市に、10/1桐生一箱古本市に参加させてもらいました。那覇
 沖映通りえきまえ一箱古本市は台風で中止になりましたが、古書
 言事堂さんのはからいによりお店に箱を置かせてもらうことに
 なりました。これはほんとうれしかった。継続してモンガ堂にも
 棚を借りています。
・けっこう多くの映画を観ました。やはりなんといっても「この世界の
 片隅に」ですね。もうこんなにジーンとこころを掴まれる映画は
 いままでになかったと思います。あとはテレビで観たのだが、
 映画にもなった「人生フルーツ」は素晴らしかった。
・読んだ本のなかでは

「外骨戦中日記」吉野孝雄河出書房新社
「断片的なものの社会学」岸正彦(朝日出版社
「自殺」末井昭朝日出版社
「孤独と不安のレッスン」鴻上尚史(大和文庫)

 が印象に残りました。「孤独と不安のレッスン」は、目からウロコ本
 でした。近年になく本を読んだように思うが、まだまだですね。
 TwitterFacebookiPhoneからアプリを削除したのがよかったかも
 知れません。
・来年は不忍の一箱に出店したいが、できないだろうな。
 ことしもつたないブログをご覧いただきありがとうございました。
 それではみなさんよいお年を。

山田真由美・なかむらるみ 『おじさん酒場』

・ことしなにがいちばんショックだったか。なんたって
 西荻窪 戎南口支店のカウンターがなくなってしまったことだ。
 このことはこのブログで書いた。

オアシス喪失。 ああ、戎SOUTH支店!
http://d.hatena.ne.jp/heno3ban/20170707

・そうそう千葉に住んでいる時も、埼玉に住んでいる時も
 ひとりで飲みたいと思ったら西荻窪に向かっていた。
・戎自体はなくなったわけではない、南口本店のカウンター、
 北口店のカウンターも残っている。でもね、あの南口支店の
 カウンターがよかったんだよ。ほかのカウンターじゃだめなんだ。
・戎南口支店カウンター難民はどうしているんだろう。わたしは
 まだ代わりのカウンターを見つけていない。
           
・山田真由美 なかむらるみ 『おじさん酒場』(亜紀書房)読了。

おじさん酒場

おじさん酒場

・11月3日、千駄木養源寺での「しのばずくんの本の縁日2017」の
 亜紀書房ブースで購入。ほんとのんべえ本が好きなのだ。
・居酒屋でのおじさん観察本とでも行ったらいいだろうか。巻末に
 太田和彦との対談が載っている。このなかで太田が「次はなにを
 頼もうかな」だけを考えてひとり呑む、そういうおじさんばかり
 だからお店は静かなのだという。そう静かなお店それが
 戎南口支店カウンターだったのだ。

小松かおり 『沖縄の市場<マチグヮー>文化誌』

・コンプレックスである。不忍ブックストリートの実行委員は、
 本に関わっているひとが多い。当たり前ですが。それもフリーで。
 いまの時代、フリーで仕事をするのはなかなか難しいから、
 みんな工夫しながらこなしている。文章を書くだけでなく、
 プラスアルファになる資格をとったり、多彩な才能を持っている。
・また新刊書店や古本屋を営んでいる。本好きなひとが集まる場所を
 持っている。そこでイベントを行ってひとの輪ができる。
・ひるがえってわたし。才能もないし、ひとを集めることもできない。
 いつもまわりの実行委員を見ながら、うらやましく嘆いていた。
・そんな自分になにができるのか、そればかり考えてきた。来年で
 実行委員になって10年になる。一箱古本市も20回目を迎える。
          
・小松かおり『沖縄の市場<マチグヮー>文化誌』(ボーダーインク
 読了。

沖縄の市場文化誌―シシマチの技法と新商品から見る沖縄の現在

沖縄の市場文化誌―シシマチの技法と新商品から見る沖縄の現在

・ひょんなことからこの本を読む機会をいただいた。那覇にある
 第一牧志公設市場のはなしである。那覇で一番、沖縄を感じられる
 ところがこの市場かもしれない。全国どこの市場でもごちゃっと
 しりるのだが、ここはそれ以上に密集している。
・11月に行ったときは、お惣菜の丸山でジューシーおにぎりや
 メンマ炒め、それに天ぷらを買いました。いかとさかなの
 天ぷらがうまかったなあ。
・そうそれでこの本は市場のことだけでなく、そこで売られている
 アグ―豚、海ぶどう、もずく、島バナナがどこから市場にやって
 くるのかを詳しく書かれている。普通なら市場のことしか書かない
 本が多いのにその裏側まで見せてくれるのが面白い。
・市場建て替えのはなしも聞こえてきているが、あの雰囲気がなく
 なってしまうのは本当にさみしい。どんなに近づけようとしたって
 再開発にその期待はできない。

積ん読く拾い読み

積読というか、読みかけの本がいくつかあります。
 そのなかからご紹介。
          
池内紀『今夜もひとり居酒屋』(中公新書

今夜もひとり居酒屋 (中公新書)

今夜もひとり居酒屋 (中公新書)

・2014年か、このブログで武蔵境の飲み屋「二合半」のことを
 とりあげたらtakさんという方から「この本に二合半のことが書いてある」
 とコメントをいただいた。もう二年も経つのか。ずっと頭の片隅に
 残っていて、やっと見つけ出しました。ほんと新書を古本で探すのは大変。
・この本の「二合半」のことからはじまっている。わたしみたいないちげんさんが
 いったらはねられていただろうな。居酒屋の格式、硬く言えばだけど。
 そういうものが薄れてきた時代だから、大切にされていたんだと思う。
 でも、やはり一度は飲んでみたかった。
          
小沼丹『清水町先生』(筑摩書房
 
清水町先生―井伏鱒二氏のこと

清水町先生―井伏鱒二氏のこと

・この本は何年かまえの不忍の一箱で貸しはらっぱ音地に出されていた、
 榊翠簾堂さんから購入した。
・師匠である井伏鱒二のことを書いたエッセイであるのだが、いま時の人
 になっている方がでてきてびっくり。

 あの人は僕をほめましたよ。

 と井伏が言ったそうだ。あの人とは誰かというと。
・井伏と小沼が将棋を指していて、小沼が惨敗したのを観ていたのが
 ひふみんだ。そして

 井伏さんと小沼さんとでは筋が違う。

 と、ひふみんがある人に感想を漏らしたのだそうだ。それを井伏は
 得意げに小沼のまえでいい放った。
・いやあ、なんか大人げないかわいい井伏の姿が目に浮かぶようだ。

鴻上尚史 『「空気」と「世間」』

・ちょっと時間ができたのでいつもは素通りしている本屋を
 ぐるっと廻ってみた。改札口を出て本屋のなかを通って駅の外に
 でる。最近お決まりのようなカフェが併設されている。
動線が悪いなと思っていた。人の流れをみると改札口から
 雑誌のコーナーと平台の間を通って、レジカウンターの前を横切る。
 これでは本を買う人と交差してしまう。
・棚は、新刊コーナー、女性向けのガーリーコーナー、旅の本、
 それに丸善松丸本舗をマネしたような一角。雑貨といっしょに
 本が並べられている。どんな本が並んでいたか印象が薄い。それに
 胸やけしそうなくらいビジネス自己啓発本がドーン!。
 「一流の成功の法則」なんて仕切り板もある。
・文庫が少々、新書や文芸の棚が見当たらない。まして人文はどこに
 あるのだ。雑誌はファッションやインテリアの洋書がバーン!と
 目につく。いやあ、くちあんぐりな本屋でした。
          
鴻上尚史 『「空気」と「世間」』(講談社現代新書)を読了。
 『孤独と不安のレッスン』が自分の内側のことであるなら、こちらは
 外側、つまり他人とのコミュニケーションのはなし。

「空気」と「世間」 (講談社現代新書)

「空気」と「世間」 (講談社現代新書)

日本人は「世間」の保証がないまま、知らない相手とコミュニケイション
を取る、ということがひどく不得手なのです。

・そうそう先日の懇親会があったときなんか、顔みしりとしかはなししない
 という状況だった。まさに不得手。そのジャンルでは著名な方なんか
 いたのにはなしかけられなかった。

なにかのきっかけで相手と会話が始まり、相手が自分と同じ「世間」に属して
いると思えば、日本人は急に態度を変えるのです。

・いろいろな例をだして「世間」とはなにかが導きだされていて、あれも
 これも自分に当てはまってしまう。「世間」からでたところが社会だそうです。
鴻上尚史のこの二冊で不安のメカニズムを解き明かしてくれたように思う。

石橋毅史 『「本屋」は死なない』

・「本屋な日々 57 3坪の自由」という冊子を入手。石橋毅史
 という人が沖縄那覇の市場の古本屋ウララのことを書いている。
国際通りから市場通りに入ってウララまでのお店にどんなものが
 並べられているか。店主宇田さんの接客態度にはどんな意味が
 あるのか。
・いやあ、文章に引き込まれてしまった。洞察力というのだろうか、
 細部まで見つめて深く掘り下げて文章にしている。この人の文章
 好きだなあ、と思ったのは久しぶり。
        
・石橋毅史の文章をまだまだ読みたくなって図書館へ。といっても
 地元の熊谷市立図書館は、耐震工事で来春まで休館。確か近隣の図書館
 だったら貸出しできるんだよなと思い出し、隣町の吹上図書館へ。
 チャリで夜道を走ったら駅前に立派な図書館が。なんだこっちのほうが
 近くてよいじゃないか。なんでいままで気が付かなかったのか。
・0総論のコーナーで見つけました。石橋毅史 『「本屋」は死なない』(新潮社) 

「本屋」は死なない

「本屋」は死なない

・「本屋」は死なない、刺激的なタイトル。1ページ目にひぐらし文庫の
 原田さんがでてきてびっくり。原田さんは、雑司が谷わめぞのメンバーで
 いつも不忍の一箱古本市に顔を出してくれる。挨拶をする程度で本のはなし
 なんかしたことはないが。その原田さんがひぐらし文庫をはじめるきっかけに
 なったのが往来堂書店の笈入店長のことばからとは。
・古本屋のことが書いてある本はいくつも読んでいるが新刊書店の本ははじめて
 かも。名前は聴いたことがあるな程度の本屋さんのはなし。石橋さんは、
 書店員となったひとの背景、本とは関係のないところから導きだして、
 どうしてこの仕事を選んだのか、そこらへんがおもしろいです。
        
往来堂書店の笈入店長は、くちぐせのように「どうしたら本が売れるんですかね」
 と聞いてくる。わたしのような素人にまでアドバイスを受けようとしている。
 そんな答えられるようなことではないんだけど。この本に出てくる書店の
 マイスターたちも同じように本のことを考えているんですね。