山田詠美『私のことだま漂流記』

・読んだことのない作家になにかの拍子で興味を持って

 本を手にすることがある。だいたいその場合は小説では

 なくエッセイである。

山田詠美の最初に読んだ本は、『熱血ポンちゃんが行く』

 だった。詳細は忘れたが家を出る時に「いってらっしゃい」と

 家族が手を振って見送ってくれるというたわいのないことが

 書かれていた。ユーモアとともに家族の愛情があふれている

 描写が面白くて、山田詠美にはまっていった。

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山田詠美『私のことだま漂流記』(講談社)読了!

・昨年、毎日新聞日曜版に連載されているのを読んでいるので、

 2回目となる。それだけ面白かったということ。

・改めて本を読んで気づかされたことは、自分が偏見と

 差別意識を持っているということ。そういうことに不理解で

 あるということ。

国、人種、性、出生の地……人間は、カテゴライズされ続けて、

仕舞いには、個人という最小の単位として残る。私は、私という

たったひとつのカテゴリーを持つ唯一の動物だ。

・考えさせられることが多い。

どんな男が好き?という問いに、多くの女は「優しい人」と答える。

でも、優しいって、本当はどういうことなんだろう。私は漠然とした

優しい人よりも「親切な人」が好きだ。

・これも「私のことだま」のひとつだけど、納得させられる。

1960年前後に生まれた人たちは、たぶん同じような感覚を共有しているかも

しれないが、その前の世代のような、社会を巻き込んだ音楽シーンを体験して

いないので、何か少し出遅れた思いがあるのだ。

・ふと思い出したけど、この間NHKで新宿西口のフォークゲリラのドキュメント

 を見たけど、これなんかまさに社会を巻き込んだ音楽シーンですね。

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・この本はこれからも何度か読み返すことになると思う。