吉上恭太『ぼくは「ぼく」でしか生きられない』

・吉上恭太『ぼくは「ぼく」でしか生きられない』

 (かもがわ出版)読了!

・著者の吉上恭太さんは、不忍ブックストリートの助っ人

 仲間である。助っ人というのはイベントのお手伝いです。

     *

不忍ブックストリートのメインイベントである一箱古本市

 では率先して一番いやな持ち場に手をあげます。たとえば、

 ほぼ一日通りに立って案内板を持っての道案内。雨が降る

 こともあります。

千駄木関東大震災にも耐えたという古いお屋敷である

 旧安田楠雄邸では、ライブやトークショーなどずいぶんとイベント

 をやらせてもらいました。恭太さんはいつも下足番をして

 いるのですが、お客さんが立て込んできたときの手際よさと

 いったらあなたもう。

・それを見ていた旧安田楠雄邸を管理しているNPOの担当者が、

 「うちの専属にならないか」とスカウトしたという。

     *

・この本は恭太さんが好き勝手に生きてきたことを振り返って

 います。好き勝手やっていてもうまくいかなくて挫折

 することはもちろんあるのだが、そのようなときに必ず

 導いてくれるひとが現れるという、そんなひととの出会い

 が書かれています。

・読んでいて正直うらやましくなりました。

     *

・恭太さんはわたしより二つ上だから、同時代を生きてきたなあ

 と思うことが多々あります。1981年に神保町の野球専門の出版社で

 アルバイトをするはなしが出てきてまわりの個性的な人物に囲まれて

 人生修行を積み重ねていくことが書かれています。1981年わたしは

 九段下の工業新聞社でアルバイトをしていました。怒られてばかり

 いたけど大人扱いしてくれることがうれしかったことを思い出した。

 近くで恭太さんも同じような夜を過ごしていたんだなあ。

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・百軒店のはなしがいちばんジーンときましたね。なんか切ない。

 戦争のこと。親が戦争を通ってきた最後の世代。きちんとあとの

 ひとに伝えていかなくてはいけないという思い。わたしのまわりには

 戦争のことを教えてくれるひとはいなかったな。

・百軒店のこと、戦争のこと。このあたりは若いひと達に是非読んで

 もらいたい。

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・この本の編集のこまちゃん、装幀のみづほさん、装画の山川さん。

 恭太さんのまわりには自然とひとが集まるのです。